
補聴器外来
補聴器外来
聴力は加齢や病気などによって徐々に低下していきます。聞こえづらさは少しずつ進行するため、本人が気づきにくいことも少なくありません。「家族との会話がスムーズにできない」「呼びかけられても気づかない」「騒がしい場所で会話が聞き取れない」など、日常生活に支障をきたすケースもあります。
そのようなとき、「補聴器を使えばいいのでは?」とお考えになるかもしれませんが、実際には補聴器を使う前に耳鼻咽喉科での診察がとても重要です。というのも、聴力の低下の中には、耳垢の詰まりや中耳炎など、治療により回復が見込めるケースもあるためです。
当院では、耳の中の状態や鼓膜の動きなどを丁寧に診察した上で、必要な検査を行い、難聴の原因と程度を把握します。特に、加齢性難聴のように回復が難しい難聴は、認知症発症リスク要因となり、社会生活のコミュニケーションを低下することで、うつ病状態に陥りやすくなるとも言われています。また危険を察知する能力の低下や、社会生活に影響を及ぼします。難聴は適切な時期に補聴器の装用を始めることが大切です。「耳が遠くなったかな」と感じたら、できるだけ早くご相談いただくことをおすすめします。
当院では、耳の聞こえに関するお悩みに対して、医学的な根拠に基づいた適切な診断と丁寧な対応を行っています。
耳や鼓膜の状態を確認する診察と、聴力検査を組み合わせて、総合的な評価を行います。その上で、補聴器が必要かどうかを判断し、適応の方は補聴器外来で診ていきます。補聴器外来は試聴や貸し出しを行いながら、患者様の聴力状態や生活環境をもとに、最適な機種を選定し、実際に補聴器を貸し出し、ご自宅や職場など普段の生活環境で試用していただきます。実際の使用感を確認しながら調整を重ねて、最適な補聴器を調整していきます。またすでに補聴器をご使用中の方で、「合っていない」「うまく使いこなせない」とお困りの方への再調整や、片耳から両耳への切り替え相談も受け付けています。
また、購入後のアフターケアにも力を入れており、定期的な点検や調整を通じて、補聴器を快適に長くご利用いただけるようサポート体制を整えています。聴力は年齢や環境によって変化するため、継続的なフォローアップが大切です。当院では、補聴器相談医と認定補聴器技能者が連携し、医療と技術の両面から、患者様の「聞こえ」をしっかり支えます。
補聴器は家電量販店などでも手軽に購入できますが、実際には一人ひとり異なる聴力の状態に合わせた調整が必要な医療機器です。適切な診断と細やかなフィッティングを行わなければ、せっかく補聴器を購入しても「聞こえにくい」「音が不自然」といった不満が残り、使用をやめてしまう方も少なくありません。補聴器の使い始めは多くの方が不快に感じます。それは音の刺激が少ない世界で過ごしていた難聴の脳になっているためです。大切なことは長い時間をかけて段階的に音量をあげていくトレーニングを行うことです。脳が補聴器の音に慣れてきます。また音と合わせて言葉を聞き取るトレーニングも必要です。家族や友人たちとの会話や積極的に外出や趣味などを楽しんでいきましょう。
トレーニング期間は特に家族の理解や協力がとても大事です。焦らず、ゆっくりと温かい気持ちで励ましながら、寄り添ってあげてください。
補聴器にはさまざまな種類があり、見た目、機能、サイズ、価格も多岐にわたります。高価な補聴器が必ずしも全員に適しているわけではなく、ご本人の聴力の状態や装用感、生活スタイルに合った機種を選ぶことが非常に重要です。
主な補聴器のタイプには、以下のようなものがあります。
長所
小さく目立たない、電話やヘッドホンを通常通りに使用できるなど
短所
小さいため操作が困難、紛失しやすい、価格が高いなど
長所
種類が豊富、比較的小さい、耳介の上にマイクがあり生理的状態に近いなど
短所
汗に弱い、メガネやマスクと重なり使いにくいなど
長所
価格が安い、操作がしやすい、紛失しにくい、マイクを音源に近づけられるなど
短所
大きくて目立つ、イヤーコードが邪魔になる、服の擦れる音がするなど
それぞれに特徴があります。個人の希望に応じで試していただけますし、ご提案もさせていただきます。
補聴器を装用すれば、聞こえづらかった音が改善され、家族との会話や外出時のコミュニケーションが円滑になります。さらに、認知症予防への効果や社会的な孤立の防止、安全性の向上、ストレスや疲労の軽減につながります。全ての音が完全に元通りになるわけではありませんが、補聴器によって得られる「聞こえる安心感」は、日常生活の質(QOL)の向上に大きく貢献します。
「人との会話が億劫で外出が減った」「趣味の活動を控えるようになった」という方が、補聴器の使用をきっかけに再び活発な生活を送るようになるケースも少なくありません。
聴力検査や語音聴力検査の結果、一定の基準を満たす場合には、「身体障害者手帳」の交付対象となり、自治体の補装具費支給制度を利用して、補聴器の購入費用の一部を公費で補助してもらえる場合があります。申請に必要な書類は自治体で配布されており、基準に当てはまる方は、当院にて診断書を作成のうえ、申請を進めていただきます。
また、補聴器の購入費用は、確定申告の際に医療費控除の対象になります。控除を受けるには、日本耳鼻咽喉科学会認定の「補聴器相談医」による診察と書類の発行が必要です。当院には補聴器相談医が在籍しており、必要な書類の作成も行っておりますので、安心してご相談ください。