耳が痛む、耳が聞こえにくい、耳鳴り、耳だれ、耳垢、めまいなどの症状が現れましたら、早めにご受診ください。耳にまつわる症状はそれほど多くありませんが、症状を起こす病気はたくさんあります。代表的な耳の病気についてご説明いたします。
症状
- 痛み、つまり(耳閉塞感・耳圧迫感)
- 耳だれ
- 耳出血
- 耳の腫れ
- 耳垢(耳掃除)
- 耳鳴り
- かゆみ
- 耳の中がくさい
- めまい
- 聴力低下
- 補聴器に関する相談
- 外耳道異物(小さな異物など)
病気
●中耳炎
中耳炎には主に急性中耳炎、滲出性(しんしゅつせい)中耳炎、慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎があります。
急性中耳炎
最も一般的な中耳炎で、中耳(耳の鼓膜から奥の部分)に細菌やウイルスが入り込み、急性の炎症が生じて膿が溜まります。
〈 症状 〉
ズキズキする激しい耳の痛み、発熱、耳だれ(耳漏)、耳がつまった感じ、などがあります。乳児などでは痛みを訴えられないために、機嫌が悪くなってぐずったり、しきりと耳に手をやったりします。
〈 検査 〉
耳鼻咽喉科医が鼓膜を見て、鼓膜が赤かったり、腫れていたりすることを確認します。また鼓膜が、その奥の中耳に膿が溜まって、膨れているのが観察できることもあります。
〈 治療 〉
軽症の場合は抗生物質や消炎剤などの服用や、炎症をやわらげる薬液を耳にたらすことで治療します。膿が溜まって鼓膜の腫れがひどく、痛みが強いときや、熱が高いときは鼓膜を少しだけ切開して、溜まっている膿を排出すると、早く治ります。
滲出性中耳炎
鼓膜の奥の中耳腔(鼓膜の内側にある空間部位で、耳小骨が収まっている)に滲出液という液体が溜まる病気です。
〈 症状 〉
難聴が唯一の症状であることも多く、難聴の程度も軽い場合が多いので、特に小児の場合は気づくのが遅くなってしまうことも少なくありません。
〈 検査 〉
鼓膜を観察すれば、ほぼ診断がつきますが、治療方針の決定のためには、聴力検査、ティンパノメトリー(鼓膜の動きやすさを調べる検査)、内視鏡検査などが必要です。
〈 治療 〉
中耳に溜まっている滲出液を無くしていくために耳管に空気を送り込む保存的治療や鼓膜切開術の外科的治療があります。合わせて耳に悪い影響を与えている鼻やのどの病気に対する治療を並行します。
慢性中耳炎
急性中耳炎後や、鼓膜切開後に、鼓膜に穴が開いたままになり、耳だれ(耳漏)を定期的に繰り返します。
〈 症状 〉
耳だれ(耳漏)の繰り返しや、聞こえが悪くなります。
〈 検査 〉
鼓膜状態の確認で診断し、耳だれを繰り返す場合は細菌検査を行います。
〈 治療 〉
基本的には急性中耳炎と同じです。薬を飲んだり耳の処置をすることによって耳だれは止まりますが、鼓膜に穴があいているため、耳に水が入ったり、風邪をひいたりすると耳だれを繰り返します。再発防止のためには、鼓膜の穴を塞ぐ手術が必要になります。
真珠腫性中耳炎
耳小骨などの周囲の骨を溶かして進行していく中耳炎です。
〈 症状 〉
真珠腫性中耳炎では、ときには三半規管を壊してめまいを招いたり、顔面神経麻痺を起こしたり、最悪の場合には髄膜炎(脳および脊髄を覆う保護膜に炎症が生じた状態)になってしまうこともあります。
〈 検査 〉
鼓膜の確認、内視鏡、中耳のCTの画像検査を行います。
〈 治療 〉
真珠腫性中耳炎を完全に治すためには、多くの場合が手術を必要とします。
●外耳炎
外耳炎とは、耳介(外側に出ている耳)と鼓膜までの外耳道を合わせた外耳(言わば、耳と耳の穴)に、炎症が生じる病気のことです。多くは耳を良く触る方に起きやすい病気です。
〈 症状 〉
外耳炎の症状には、強い耳の痛みと痒みが挙げられます。症状が進行すると強い臭いを伴う黄色、または白色の耳だれが出るようになります。外耳道が炎症によって腫れ上がる「びまん性外耳炎」が起こると聴力の低下を招くため、中耳炎と取り違えられることが、しばしばあります。また、耳におできが発生する「限局性外耳炎」は、おできが破れると膿と血液が出ることもあります。
〈 検査 〉
特別な検査をしなくても症状から診断ができます。原因が細菌なのか、真菌なのかで治療法が変わってきたりしますので、耳だれの細菌検査などをする場合もあります。
〈 治療 〉
脱脂綿や吸引機などを使って軽く耳掃除を行って清潔にしてから、局所への点耳薬投与、軟膏塗布などを行います。びまん性外耳炎は耳を清潔にした上で、抗生物質の塗布と投与を一週間ほど行います。限局性外耳炎では、おできを切開して膿を出し、抗生物質を塗布します。痛みが激しい場合は、鎮痛剤を投与します。できるだけ普段から触らないようにすることが大切です。
●耳鳴り
耳鳴りがどうして起こるのかは、今もってよくわからないのが実状です。耳鳴りを訴える人の多くは、何らかの聴力障害を持っている方が多いのですが、検査上は正常でも耳鳴りを訴える場合があります。聴覚系の異常が、外耳、中耳、内耳、聴神経、中枢神経のいずれの部位であっても耳鳴りを起こします。また、過労やストレス、心因的要因によっても耳鳴りは強くなったり、弱くなったりします。
〈 症状 〉
周囲に音がしていないのに、音がしているように感じます。音の種類は「キーン」「ピー」「ジー」などなど、千差万別です。
〈 検査 〉
耳鳴りの検査には一般的な耳鼻咽喉科検査、聴力検査を用いた客観的な耳鳴り検査などがあり、こうした検査から耳鳴りの原因になった病気やその性質を明らかにします。
〈 治療 〉
耳鳴りの主な治療には、原因療法、耳鳴りの音響療法、そして心理療法があります。原因療法は、耳鳴りの原因がはっきりしている時に行います。中耳炎が原因なら中耳炎の治療を、メニエール病や突発性難聴が原因なら、それぞれの治療を行います。しかし、耳鳴りの原因を治せば耳鳴りが完全に消えるかと言うと、必ずしもそうとは言い切れません。
●難聴
難聴とは聴覚が低下した状態のことで、突発性難聴、騒音性難聴などがあります。耳鳴りを伴うこともあります。
突発性難聴
ある時、突然に耳が聞こえなくなる病気です(通常片側)。突発性難聴の原因はまだわかっておらず、急激に発症する感音難聴のうち、原因不明のものを突発性難聴と呼んでいます。
〈 症状 〉
突然に耳が聞こえなくなる(軽度から高度の難聴)と同時に、耳鳴りや耳がつまった感じ、めまいや吐き気を生じることもあります。
〈 検査 〉
純音聴力検査が必要です。場合により、平衡機能検査も必要になります。
〈 治療 〉
急性期の治療として最も重要なのは安静です。突発性難聴の発症前に精神的・肉体的疲労感やストレスを感じていることが多く、心身ともに安静にして、ストレスを解消することが肝心です。難聴の程度によっては、入院治療が望ましいケースもあります。 突発性難聴については、いろいろな治療法が検討されていますが、どのような治療法が最も有効なのかは明らかにされていません。厚生労働省の研究班で、突発性難聴に対するさまざまな薬剤の有効性が調査されましたが、どの薬剤が有効かの結論は出ませんでした。現在のところステロイドを使用することが多いです。現時点では、発症時の状況や臨床所見、既往歴などを総合的に判断し、治療法を決定しています。
騒音性難聴
騒音下での職業など、長期間騒音に曝されているうちに、徐々に進行する難聴を騒音性難聴と言います。爆発音やロックコンサートの演奏など、強大な音のために急性に起こる難聴は音響外傷です。
〈 症状 〉
多くの場合、難聴に加えて耳鳴りを伴います。
〈 検査 〉
難聴の程度を調べるために純音聴力検査が必要となります。病気の初期には、4,000Hz(ヘルツ)に特徴的なC5dipと呼ばれる聴力低下像がみられ、比較的容易に診断できます。また騒音下作業の職歴の有無が、騒音性難聴の診断には極めて有用です。
〈 治療 〉
急性に起こった音響外傷では、ステロイドが有効です。長期間の音響被ばくで生じた騒音性難聴では、ダメージを受けた有毛細胞を元に戻すことは、現在の医療では不可能です。将来に向けて難聴の進行を避けるためには、遮音性の耳栓を使用する、長時間の音響被ばくを避ける、ときどき耳を休ませる、規則正しい睡眠や適度な運動を心がける、などが大切です。また、定期的に聴力検査を受けて難聴が進行していないかどうかを確認することも必要です。
●耳垢(耳あか)
耳垢とは、空気中のほこり、皮膚の残骸、および外耳道の耳垢腺というところから出る分泌物などが混ざり合ったものです。
〈 症状 〉
外耳道に耳垢がつまった状態を耳垢栓塞と言い、耳の閉塞感、難聴、耳鳴りなどを起こしたりすることもあります。
〈 検査 〉
耳垢を除去しても聞こえが悪い場合には、聴力検査を行うこともあります。
〈 治療 〉
耳の中を顕微鏡で見ながら、鉗子(かんし)や異物鉤(いぶつこう)、吸引管などを駆使して、丁寧に耳垢を取り除きます。耳垢が堅くなってなかなか取れない時には、耳浴を行って柔らかくしてから取ることもあります。痛みが強く、頑固でなかなか取れないような場合は、2~3回に分けて除去することもあります。
●補聴器
聴力は一般に30歳代を境に衰え始め、特に高音域から低下していきます。高い音が聞こえにくくなると、母音は聞き取れるものの、子音が聞き取りづらくなってきます。例えば、「広い」と「白い」、「佐藤さん」と「加藤さん」などのような文言では、言葉の聞き間違いが起こりやすくなってきます。補聴器を使う前に、日常の聞こえ方について改めて思い返し、まずはご自身の聴力の状態を正確に認識することが大切です。
〈 目的 〉
難聴者が補聴器を使う目的は、主に言葉を聞き取ることにあります。「家族や友人との会話」「仕事上のコミュニケーション」「テレビや映画を楽しむ」など、生活のさまざまな場面における言葉の聞きとり状況を改善するために、補聴器は利用されます。
〈 補聴器の種類 〉
補聴器と一言で言っても、いろいろな種類があります。見た目の形も違えば、価格によっても、搭載されている機能によっても違いが出てきます。補聴器にはいろいろな種類、タイプがありますが、それぞれの特徴をよく理解して、自分の聴力や聞こえの状態、形状や付け心地の好み、予算等に合わせて、最適な補聴器を選ぶようにしましょう。
〈 購入 〉
補聴器は主に生活の場で使われますが、あくまでも医療機器ですから、自分に最も合った補聴器を選ぶために、補聴器相談医から販売店の紹介を受けるようにしてください。当院では補聴器外来も行っていますので、ご相談ください。
●顔面神経麻痺
ある日突然に片側の顔が動かなくなる病気です。末梢性の顔面神経麻痺の場合は顔面神経の膝神経節という場所で単純ヘルペスや帯状疱疹ヘルペスが再活性して起きるという説が有力です。脳出血や脳梗塞の可能性もある為、注意が必要です。また外傷によるものや耳下腺腫瘍で起きることもあります。
〈 症状 〉
突然に顔の片側が動かなくなり、目が閉じにくくなる、口元から水がこぼれる、笑っても顔が引きつるような症状が出現します。中には耳鳴り、めまい、難聴、味覚障害などを伴うこともあります。
〈 検査 〉
顔の動きをみて麻痺状態をスコアで評価する方法や、聴力検査、血液検査、味覚検査、頭部MRIなどの検査を行います。
〈 治療 〉
麻痺が軽度の場合は、外来での内服加療を行いますが、高度な麻痺の場合はステロイド点滴療法が必要になり、入院となります。また場合によっては顔面神経減荷術といった顔面神経の圧迫をとる手術を行うこともあります。